サテライトオフィスの検証@

サテライトオフィスの検証
〜NECと富士ゼロックスの事例〜


吉祥寺サテライトオフィスから約1O年、志木サテライトオフィスから約8年が経過した。当初、東京一極集中の是正、個人のゆとりの確保、オフィススペースの確保などを目的としてサテライトオフィスが注目されたが、企業の人事管理制度やコスト面での問題などにより(また、バブルの崩壊により、その動きは停滞化し)、決して成功したとはいえなかった。
しかし、逆にバブルの崩壊後、経済成長が停滞し、社会的に企業の人事雇用制度の変革、マルチメディア社会の到来などの変化が生じ、再びサテライトオフィス、テレワークが注目を浴びている。サテライトオフィスの取り組みが、約10年経過した現在、これまでのサテライトオフィス、リゾートオフィスの取り組みを整理し、過去の成功、失敗を分析することによって、今後のサテライトオフィス、テレワークの進むべき方向を考察する.。

● 最近のサテライトオフィスの取り組みからみられる傾向

NECフレオ町田は平成7年5月、富士ゼロックス新百合ヶ丘サテライトオフィスは平成5年2月にそれぞれ開設されている(いずれも詳細については後述)。これらの事例は、バブル崩壊後に開設されたサテライトオフィスであり、必ずしも施設にお金をかけているわけでもない。むしろ、外見より中身を充実させ働き方、しくみについての工夫がみられる。

また、昨今のサテライトオフィスは、顧客近接型サテライトオフィスやスポットオフィスなどの業務活動の効率化を志向した形態が主流となっていたしかし、NECフレオ町田や富士ゼロックス新百合ヶ丘サテライトオフィスは、職住近接を基本理念として展開をしており、今後のサテライトオフィス、テレワークの推進にあたって、進むべき方向を示暖しているといえる。今回は、最近のサテライトオフィスの取り組み事例から、新たな改善点、ポイントについて考察する。

@社内環境の整備

両社ともメインオフィスとサテライトオフィス間のネットワーク化が図れ、NECはインターネットとも接続されている。このようなハード面の整備は従来から指摘されているところであるが、両社のサテライトオフィスは、さらにネットワーク上のアプリケーションの部分まで整備している。
ネットワークを活用することによって、電子メールによる上司、同僚とのコミュニケーション、データベースの構築による情報の共有化、電子的な伝票処理、承認、決済などが可能となっている。これらのシステムは、メインオフィスーサテライトオフィス間だけでなく、全社的にこのようなネットワーク上での仕事の進め方が確立され、文字通り「離れていても働ける環境」が実現されている。

Aサテライトオフィスの運営管理

NECは1984年に吉祥寺でサテライトオフイスの試みを行い、その後も、通商産業省のプロジェクト、浦和や大阪でのサテライトオフィスの取り組みを行っている。これらの長期にわたる取り組みの経験から、サテライトオフィスの運営管理の重要性を認識し、運営管理をきちんと行うテナントとしてのサテライトオフィスを選定、設置した。

Bトップの理解と支援、全社的なコンセンサスの形成

両社ともサテライトオフィスの取り組みに対して経営トップ層の理解と支援がある。特に、富士ゼロックスは「New Work Way(ニューワークウェイ)」という理念の基に、社内に新たな働き方を確立する運動が行われている。この一環としてサテライトオフィスが位置付けられ、全社的なコンセンサスが形成しやすい素地にある。また、両社ともサテライトオフィスの地道な取り組みを継続して行っていることにより、全社的なサテライトオフィスの認知度が向上している。富士ゼロックスは、既に個人レベルの生産性向上などの効果を部門長レベルの大半に理解させている。

C管理職の理解と管理能力の向上

日本だけでなく、アメリカでもサテライトオフィスの推進の障害となるのが上司の反対であるといわれている。上司は、常に近くに部下がいないと安心できない、ちょっとした頼み事もできないような環境を固辞する。両社とも個人、勤務者レベルの希望は多いが、上司の賛成を得られないことなどによって、実際に勤務できる人はまだ多くはない。

富士ゼロックスでは、前述したようなサテライトオフィスの効果を明確にし、社内のコンセンサスを確立するとともに、上司の管理能力を向上させる取り組みを行っている。全社的にそれぞれの個人のアウトプットを明確にし、目標を設定することによって成果物を重視した業務遂行を行っている。また、部門の生産性向上(部門、組織が何を目指しているのか)を図るために、ある一定期間における目標を設定させている。これらの管理能力は、サテライトオフィス推進のためだけでなく、企業、管理者の生き残りのためにも必要である。

D教育・トレーニング

前述したような管理者の管理能力育成のためには、そのための教育・トレーニングが必要である。また、上司、勤務者ともに、離れて働くことを苦にしない情報リテラシーの能力も求められる。例えば、電子メールの使い方、習慣づけ、離れて働くことに対する心構えなどがあげられる。これらのトレーニングについては、事前だけでなく、定期的に行う必要がある。

●富士ゼロツクス 新百合ヶ丘サテライトオフィスの事例

富士ゼロックスは、1988年志木サテライトオフィスの実験参画をはじめ、1989年に武蔵野コミュニティオフィス、1991年にKSPサテライトオフィスを数社共同で実験を実施してきた。そして1993年に新百合ヶ丘にサテライトオフィスを開設した。今回は、新百合ヶ丘サテライトオフィスの見学に基づき富士ゼロックスのサテライトオフィスに対する考え方について考察する。

1,サテライトオフィス設置のねらい

富士ゼロックスは、「New Work Way(ニューワークウェイ)」という全社あげての運動を実施している。これは、新たな働き方を創造することによって社員の自己実現、企業の競争力の強化を図ることを目的としている。サテライトオフィスはこの運動の一環として位置付けられている。また、具体的なねらいとして、勤務者の通勤時間の短縮、勤務者の疲労回復、ゆとりの確保、業務の効率化、知的生産性の向上等があげられている。

2.サテライトオフィスの概要

新百合ヶ丘サテライトオフィスは、平成5年12月に開設され、同社の事業所内に設置されている。事業所内には、営業などを対象としたスポットオフィス(10人定員)やTV会議システムが導入されている。TV会議システムは約70%と高い稼働率である。既に離れて働けるような素地が形成されつつあるといえる。

現在のサテライトオフィスの定員は18人であるが、10月からは拡張を図り、45人勤務できるようにする予定である(武蔵野サテライトオフィスは20人定員:)。3.サテライトオフィス勤務者
18名のサテライトオフィス勤務者は、赤坂と西葛西にある本社からの異動者であり、各部1〜2人程度が選ばれ勤務している。基本的に職種は問わず職住近接が図れる勤務者が対象となっているが、部門長の承認、推薦が必要である。

メインオフィスヘの出社については、個人差があるが週に1回程度出社している。また、勤務者はサテライトオフィスに異動する形態を採っており、基本的にシングルデスク、本社には机をおいていない。しかし、本社の空きスペースは虫食い状態であり、実質的なオフィススペースの削減までには至っていない。

4.サテライトオフィスの成果

同社の生産性向上の測定方法についてはアウトプットの量とホワイトカラーの本来の業務である思考時間の量で測っている。サテライトオフィス勤務では、アウトプットが50%、思考時間が20%増加している。ただし、これは個人レベルの結果であり、部門単位の生産性向上については今後の検討課題となっている。

また、勤務者の通勤時間は1人平均72分(片道)短縮され、年間約576時間の短縮が可能となっている。

一般的に、集中オフィスでは集中による業務の効率化が図れ、生産性が向上する。しかし、その実態は管理者の過剰なほどのチェック、指示が勤務者の構成力、自立性を阻害しているとも考えられるまた、管理者の管理能力の欠如が集中オフイスの利点によって隠蔽されているとも考えることが可能である。この仮説に基づくと、サテライトオフィスは、勤務者の自立化を促し、創造性を高める手段であるといえる。

当然、サテライトオフィス推進のためには、上司の管理能力の育成が必要不可欠である同社では3年計画で全社あげての部門生産性の向上を目指しており、各部門が何をアウトプットするのか、何を目標にするのかなどの課題を設定し、目標管理の徹底と管理能力の育成に努めている。

5.今後の展開

同社の地道なサテライトオフィスの取り組み、成果の提示によって徐々に社内的なコンセンサスが育成されてきている。部門長レベルでもその大半がサテライトオフィスの効果を認め、所轄部門の勤務者に対してサテライトオフィス勤務を認める気運が生じている。
今後の展開として、富士ゼロックスは、ここ2〜3年で首都圏周辺に数ヶ所のサテライトオフィスの設置を計画している。また、将来的には、在宅勤務との併用を図ることを計画している。


(株)NEC総研 社会政策研究グループ
嶋木 利哉